ブラック・ティー (角川文庫)

ブラック・ティー (角川文庫)

わずか数時間で読了…。こちらが原作のコミックを読んだことがあって、好みのタイプだったので手に取ってみたんですけれど、これだけ原作とコミックとの間にイメージの相違がないものもめずらしいな〜と関心しました。たぶん原作の描写がさっぱりしてるからなんでしょーね。
さて、前回に引き続きこちらもオムニバスの作品で、ひとつひとつのお話はとても短いです。でもおもしろかったな。誰にだって身に覚えのあるような小さな罪とそこからくる罪悪感とか、ひとを愛するということ。わたしが好きなのは「夏風邪」と「留守番電話」ですね。「少女趣味」も良かったなあ…。(さわやかな話もありますが挙げた3つはどれも読後感がじんわりと悪いです)「何だか笑ってしまった。私はもしかしたら殺されたいのかもしれない」。「世界中の女に、僕は嫌われたかった」。たとえばわたしたちが故意にでも過失にでも罪を犯してしまって、それが自身のこころに大きな影を落としているとしたら、わたしたちは誰かに許してもらいたいと思う反面、どこかで絶対に許さないでずっと軽蔑していてほしいと願っているのかも知れません。そうすることで罪を償えると思っているのかも。淡々とした文章だからこそ考えてしまうというか。ひとの愛しさを思い出せる作品。おすすめです。