ここのところ触れた作品をざっと紹介いたします。


スプートニクの恋人 (講談社文庫)

スプートニクの恋人 (講談社文庫)

初めての(正確にはこの方が翻訳された絵本(に近いもの)は読んだことありますが)村上春樹さん作品。始まりの、すみれとミュウの出会いのシーンでうんざりしてしまって、読むのやめようかなーと思いつつもグダグダ読み進めてみたら、まあ、面白かったかなという感じ。「うんざり」の主な原因はたぶん違和感。その場に積極的に存在しない「ぼく」が二人の出会いを語るというかたちがどうにも不自然で。「ふよふよ」ではなく「もやもや」な不確かさを感じて。その出会いのシーンが終わってからはそんなこともなく、すっと読めましたが。これは勝手な感想ですが、何ていうか「ダンジョン」みたいな小説だったなーと思います。妙に回りくどくて、それゆえ難解な「地下」迷宮。目的達成は最下階のある1箇所でしか成し得なくて、そこ以外に目的は存在しない。価値とか意味はそこらに散らばっているとしても。
この方については作品に、というよりもむしろご本人にすごく興味があります。いつか夕方のニュース番組を観てからずっと。彼の作品が何かの賞(なんだっけな、確か海外のだった気がする)にノミネートされていて、その式が間近に迫っているという旨のニュースだったんだけど、その締めくくりが、「肝心の村上春樹さんは現在行方不明です」。ニュース内容に「やられた!!」と思ったのは生まれてこのかた、あの時1度きり。


FINE DAYS (祥伝社文庫)

FINE DAYS (祥伝社文庫)

単純に楽しめましたね!本多孝好さんの作品を読むのはこれが2度目で、あいかわらず女性描写は思いっきり男性から見た憧れの女性像、「男の人ってこういう女性に惹かれますよね!ね〜!」でしたが、それも含め面白かったです。4つの短編からなる1冊。「シェード」は少しおとなしめでしたが、他3編は盛大に「SF」してます。もしくはファンタジー(普段読まない分野なので分類が全くわからない、もしかしたらどちらとも言えないのかも知れない)?ただ、恋愛小説ではないと思うんだけどな…これがそう呼ばれてる理由が全く理解できない。淡白な文章で読みやすく、ストーリー展開も明快なので、短編のドラマを観てるような感覚でした。
話はちょっとズレますが、もしも「アウラ入門書」がこんなだったら、社会学とか心理学はもっとおもしろいのにー、と思います。ベンヤミンに怒られそうな主張ですが。一回性こそユニークで、かつ尊ぶべき価値だという主張の確からしさは、今の時代ホント、見る方にすべて委ねられるところだと思います。かつて彼が生きた時代はちょうどアウラ喪失が始まった頃で、だからそれが否定的に見えることはとても自然でまっとうなことだけれど、時代を超えて常に正しい事象などありえませんからね。それはガリレオが裁判で有罪と判決を下されたように、ナポレオンの一生に(もしくは死後にも依然として)みられるように。DVDだとかCDだとかが多く普及している今、アウラの尊さを力説することはむしろナンセンスである気すらする。でも、じゃー、1回性の持つうつくしさは存在しないのか?うーん、そんなこともないんじゃない…?と、ここでこの本を読んでみる。さて、どの話をおもしろい(excitingね)(どうでもいいけどgoo辞書のexcitingの訳にひとつ、「すてきにおもしろい」というのがあります。なるほど良い訳だ!)と思ったか。アウラを顕著に否定する「イエスタデイズ」か、それとも反対に強く肯定する「シェード」か。また、前者だからと言ってアウラ否定派かといえばそうでもないし(いうまでもなく後者然り)。そのへんをちょっと、ディベートしたら楽しそうだなーと思ったわけです。「社会学入門へ入門」くらいのモンですが。


青い春―松本大洋短編集 (Big spirits comics special) ゾディアック 特別版 [DVD] リトル・ミス・サンシャイン [DVD] リロイ&スティッチ [DVD]
リトル・ミス・サンシャイン」非…っ常〜に良かったです。久々ヒット。殿堂入り。最高にあったかくなれるホームコメディです。個人的にはドウェーン(9ヵ月間沈黙を守り続け、必要なときは筆談で会話するニヒルニーチェ崇拝者)愛しています。あとフランク(自称「アメリカで1番高名なブルースト研究者」でゲイの自殺未遂経験者)も良かった。ホームコメディって、感動と笑いどちらかに偏りすぎていて(一方にすべて重点を置いているならまだしも)、結局泣けず笑えずの作品が多い気がしますが、こちらの作品はもー笑いながら泣けます、ホントに。今回すでに記事が長くなってるのであまり多くは語りませんが(時間があれば改めて記事たてて語りたい)、ちょっとでも興味のある方はぜひ観てみてくださいね!