町長選挙

町長選挙

ミスター奇人伊良部神経科医シリーズの3作目。悩める患者を前に、伊良部がやりたい放題好き放題しているうちに、いつの間にやら問題が解決している…という読後奇妙な気持ち良さの残るこのシリーズ。期待大で読み始めました。が。
いくらか笑えるところはあったものの、前2作と比べると見劣りする作品かなーと思います。実在する人物をほぼ名指しでモデルに起用するようなやり方も、そこを通して世の中を切ることも(しかも残念なことに、著者が自身の聡明さに自負があるんだろうなーということくらいしか印象に残らない)、わたしたち読者はそんなこと望んでないよ!と言いたい。マンネリ感をぬぐうために今回、趣向を変えたんだとしたら明らかに失敗。というか、着眼点から全くもって違っている。と、強く思う。わたし自身がこのシリーズのファンだから言えることだけど、伊良部(シリーズ)に変化を求めるくらいなら、最初からこのシリーズの読者になってないんです。変な皮肉とか社会批判とか興味ないとは言わないけれど、伊良部の奇人ぶりに癒されたい、くすりと笑いたいと思ってこの本を手に取るときには、もっとも必要のない類いのものなんじゃないかと。言って物書きも商売なのだから、こんな甘ったるいこと(マンネリでもいい、むしろマンネリでいてくれという意見)通じないよなーとも思いますが…。イカン、悲しくなってきた。
えーっと、残念に思うあまり批判的な文章になってしまいましたが、ひとつの読み物としては非常に読みやすく、面白い作品になっています。伊良部シリーズ未読の方は、興味があればぜひ1作目の「イン・ザ・プール」を手に取ってみてくださいね。