しかたのない水 (新潮文庫)

しかたのない水 (新潮文庫)

何となく買い書籍第2弾。タイトルに惹かれて買ったんですが、うん、予想以上によかったです。連作短編集です。「手紙とカルピス」〜「運動靴と処女小説」までは読んでいてすっごくイライラしますが、それも描写が上手いからだろうなーと。特に「手紙とカルピス」はひどくて、最低な男が周りの女をバカにして傷つけて、でもそんな自分自身に1番腹を立てていて、今さっき手に入れた女だって何だってすべて放り出して、できることなら逃げ出したいと思っている…という。じゃー逃げ出せばいいじゃんと。所帯も職も自分の家すら持ってない(女の家を転々としている)んだからいつでも逃げ出せるじゃんと。まーそれができないのが人の弱さで、最低なことをしておいて逃げ出したいのもまさにそれで、限度はあるにしろ身に覚えがあるから腹も立つんでしょうね。しかし、「サモワールの薔薇とオニオングラタン」で方向転換し、それ以降は妙な非現実感とともにダダダッと物語が進みます。その辺りの、前半とはまた違う類いのどうしようもない感じがとても好きでした。ラストは、硝子がパリンと割れてしまうイメージ。「えっ?」という瞬間の戸惑いと、どうしたって取り返しはつかないということ。納得して片付けるほかはないのです。
梅雨時期に読めてよかった。



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最近サスペンスとホラーの間みたいな作品しか最後まで観られない…。「スリーピーホロウ」笑えました。たぶん笑う作品じゃないんだろうけど。おもしろいのはおもしろいし、美しいんだけど、ご都合主義というか強引だなというか何というか。でもジョニーのインテリ風バカで臆病かつ真っ直ぐな男はものすごく良かった。ここぞという場面では小さい子の後ろに下がり怯えるイガボット…首なし騎士を目の当たりにしてベッドに寝込むイガボット…かわいい…。