最悪 (講談社文庫)

最悪 (講談社文庫)

衝撃を受けた1冊。奥田さんの本とはいえ、タイトルと表紙から何となく敬遠していたんですが、読んでみたら、おおっ!という感じでした。従業員2名の小さな鉄工所の社長と、家庭に悩む憂鬱な女性銀行員、パチンコとカツアゲで生計を立てるプー男子。そんな、まったく無関係なはずの3人の「最悪」な日々と、引き起こるひとつの事件の話。しかし、ジャンル分けするならばヒューマンドラマかなと思います。サスペンスとかミステリーと思って読むと、前半部分で疲れてしまうかも。事件の裏に人間模様というより、人間模様の末の事件を扱っているので。それにしても、3人がひとつになってからの勢いには、爽快感すら覚えました(笑えますよ!)。なんていうんだろうなー…地味だったはずのそれぞれの人生が、だんだんおかしくなってきて、いつの間にかこんなことに!という。読んでいるこっちまで気持ちがよどむ前半部分からの持って行き方は秀逸。少し分厚い本ですが、忍耐力のある方なら、楽しめると思います(ただし、オシャレ感はゼロです)。オススメですよー!
わたしは鉄工所社長の「最悪さ」にもっとも同情していたので、彼視点の最終章の結びにはうっすら涙しました。よかったね…!いやよかったってことはないけど、でも、…よかったね!(読んだらわかるだろうこの気持ち!)
それにしても奥田さん、こんな作品を書いておきながら「ララピポ」もですもんね…。ふつう、「最悪」を読む人は「ララピポ」を読まないし、逆も同様だと思うのに、そのどちらをも同一人物がむしろ書いているんだからまったく脱帽。スゴイ人だ。



死神の精度

死神の精度

アヒルと鴨のコインロッカー (ミステリ・フロンティア)

アヒルと鴨のコインロッカー (ミステリ・フロンティア)

どちらも映画公開時、観たいなーと気になってい(て結局、観なかっ)たもの。原作を調べはしてなかったので知らなかったんですが、両方とも伊坂さんだったんですね…!
おもしろかったです。こりゃ映画化されるわ、と思いました。でもね、ミステリーって多かれ少なかれそうなってしまうものなんだろうけど、どこか理屈っぽいというか、独りよがりというか、説明くさいというか。セリフですべて片づけられちゃった感じがどうにも(「チルドレン」の第1章でも感じたところ)。物分かり良すぎるというか、えっ、理解してその上納得までしちゃうの?いいの?と思うところがちらほら。わたしがミステリーに慣れてないだけなんだろーか…。まーさらっと読むには文句ないです。そういうものかな、ミステリーは。エンターテイメントですよね。


↓それでもどうしても気になったところがひとつあったので、以下「アヒルと鴨のコインロッカー」の最終部分のネタバレを含む独り言です。反転でどうぞ
最後に河崎(と呼んでおく)がロッカーに神様を閉じ込めたのは、あれ何でなの?悪いことをするから、というなら事件を起こす前から閉じ込めただろうし。わたしが思ったのは、(乱暴な言い方をすると)復讐を果たして、後追/い自/殺をするから、ということなんだけど(悪いことは悪いことでも、何ていうか事件とは質の違うものだし、これならあのタイミングで神様を閉じ込めるのもわかる)、それなら「犬を助けるために」というのは無駄、というか邪魔ですよね…。もともと死ぬ気だったけど、そこに犬が…ということ?琴美とドルジ(と呼んでおく)の始まり(出会い)と終わり(死別とはまた別の区切りで)を、轢かれそうな他者を助けるという同型で示したかったという理解でいいの?なんか納得いかない…。ムズムズする…。
↑以上



死神つながりでご紹介。